Weekly Contents #42

2024.09.05 - 2024.09.11

Outline

🎞️ 塚原あゆ子「ラストマイル」

監督・塚原あゆ子、脚本・野木亜紀子、プロデュース・新井順子という、人気ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の製作陣で制作された映画「ラストマイル」。上記の2ドラマと同じ世界線という設定でつくられており、シェアードユニバースとしても話題を集めていた。主題歌を米津玄師が担当したのもドラマから引き続き。

物語は、ショッピングサイトを運営する外資の大手流通企業の最大のイベント、ブラックフライデー前夜に関東センターから配送された商品が爆発し、そこから連続爆発事件に発展していくというサスペンス映画。外資のショッピングサイト企業という、もろあの会社という何も隠せてないようなストーリー笑

資本主義に対して、加速するという動詞がよく使われるが、まさしく加速する資本主義への問題提起をしているかのような映画だなと感じた。映画内で、速度を0にするというようなことも言っていたし。

ただ、ちょっとネタバレになるが、終わり方はしんどいと思ってしまった。悪い終わり方という訳ではなく、むしろ、現実を突きつけられる終わり方で好きなのだが、一瞬、速度が0になっても、その後は引き続き資本主義が加速していくさまを見せられ、登場人物がなんともいえない苦悶の表情で終わっていったようにじぶんは感じたからだ。

by grandcolline

🎫 キムヤスヒロ&リリスクminanのヨル学 -アイドルMV編-

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lyrical school のプロデューサーであるキムヤスヒロと、プレイングマネージャーの minan によるイベント。今回が初開催で今後も続けていきたいとのこと。初のゲストは、解散してしまったアイドル NELN のプロデューサーで映像作家の森岡千織で、アイドルの MV について語ろうというもの。キムヤスヒロも森岡千織も好きな映像作家だったので、この2人のトークショーは聞かなくてはと思い、配信で視聴。

アイドルの MV は低予算で撮らなければいけないことが強いられている。後半のトークパートでそのような話題があげられていたが、キムヤスヒロも森岡千織もネガティブな感情ではなく、予算はないはないで楽しいという発言をしていたのが印象的だった。確かに MV の尺の長さであれば、ワンアイデアで勝負できるし、この2人の作品にはそういったものが多い気がする。

ファンから送ってもらったチェキで作られた「LAST SCENE」や、

風景をメイン、アイドルを背景にした「JUKE」など。

影響を受けた映像作家として、ミシェル・ゴンドリーの名前を出していたが、確かにつながるところがあるなぁと思った。

また、NELN が好きだった身としては、森岡プロデューサーの NELN の失敗点をあげるとすれば「コンセプトがふんわりしていたところ」という発言が興味深かった。今、立ち上げを行なっているアイドルグループでは、コンセプトにかなり力を入れているとのことだった。アイドルというコンテンツを、音楽・ダンス・アートワークなどの総合芸術としてみる見方があるが、確かにそういう見方をするのであれば、コンセプトはかなり重要な要素なのだろうなということを感じた。

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🎞️ 濱口竜介「PASSION」

濱口竜介の東京藝術大学大学院映像研究科の修了作品。下北沢の K2 で濱口竜介特集上映が始まったので、そのひとつとして鑑賞。K2 は家からも近く行きやすいので、この特集上映はあと何作品か観に行きたいと思っている。

じぶんは恋愛映画は、どちらかというとそんなに好きではないのだが、「寝ても覚めても」はかなり好きで、同じ濱口監督の作品なので期待をして観に行ったのだが、この映画もその期待を軽々とこえてくるぐらい好きだった。とにかくラストシーンが最高だ。うまく表現できないが、現実を煮詰めてつくったフィクションという感じがした。

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🎞️ 太田達成「石がある」

監督、脚本・太田達成、助監督・清原惟、編集・大川景子という(個人的に)話題の面々によって制作された映画「石がある」。ポレポレ東中野で、太田達成監督と編集の大川景子さんのトークショーがある回を鑑賞。

映画は考えるのではなく感じればいいということを再認識させられる映画だった。これは「ラストマイル」を観た翌日に観たから余計に強くそう感じたのかもしれない。

あらすじは、川原で出会った男女ふたりが水切りをしたり石積みをしたりしながら、上流に歩いていくというだけのもの。恋愛でもなければ友情でもない、不思議な関係のまま進んでいく、男に優しさを感じたと思えば狂気を感じたりもする。

圧倒的な無意味性、そしてその時間を共有するということ。この映画の満足感の正体を無理やり探すとそうなのかもしれないが、その行為すらも野暮なのかもしれない。

あと、上映後のトークショーで、編集で突然石のカットを挟み込んだりしたのは「横に流れて行く時間感覚を割って縦に見る」という効果をねらっていると話していた。

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📖 小原晩「これが生活なのかしらん」

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以前の wc でも紹介した「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」の著者である小原晩の書き下ろしエッセイ集「これが生活なのかしらん」。以前の本を読んでから完全にファンである。

この人の書く文章は面白い。特に自分が好きだったのが「大阪出張日記」の章。この章は小原晩の人生にとって転換点のひとつとなる出来事のことが書かれていると思うが、その日々を日記という形をとることで、日付で分けられるため、リズミカルで断片的に書かれているような気がする。日々のつらさやまわりの優しさが垣間見えるが、断片的であるがゆえ、読み手の想像にゆだねている部分も多く、自分は不思議な感情移入をしながら読んでいた。

別の感想だが、文章にひらがなが多いように感じた。本を読んでいて、ひらがなか漢字かということは気にしたことなかったが、こういうのは意図的にやっているのだろうか。なんか、小原晩の文章からあふれる優しさみたいなものは、こういったことの影響も少しはあるのかなぁと考えたりした。

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⭐ ねおち「ねおちしていたら108年経ってましたワzzZ」

室井ゆうプロデュース、中川大二朗サウンドプロデュースの6人気組アイドル「ねおち」。

ねおちは、昨年出したアルバム「待ち合わせの図書館にて」が、楽曲派と呼ばれるアイドルオタクから高い評価を受けたアイドルで、じぶんにとってもそのアルバムは去年のお気に入りの1枚だ。

そんな、ねおちの2024年の新曲「ねおちしていたら108年経ってましたワzzZ」。ふざけたタイトルなのだが、相変わらず曲は最高にとがっている。まず、イントロのメロディがめちゃくちゃかっこいい。そのメロディが楽器を変えて次々と演奏される様が幻想的で、いっきにねおちの世界観に引き込まれる。Bメロ以降は、同時に違うメロディ違う歌詞が歌われ、それぞれのメンバーの声がうまくパンされているので、ヘッドホンやイヤホンで聴いても面白いと思う。

解散してしまったアイドル sora tob sakana のプロデューサの照井順政が、注目を集めるためにとがった音楽をやるのではなく、アイドルのコンセプトのために、結果的にとがった音楽をやったと言っていたが、ねおちにもそれを感じる。そういう意味でじぶんは、ねおちに、sora tob sakana からの文脈を感じる。

by grandcolline


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Weekly Contents は毎週その週にハマったコンテンツを紹介するブログ / ニュースレター。 映画セブンでいう図書館の貸出履歴であり、Radiohead でいう Kid A となりうる概念。コンテンツの排泄場所。

毎週、水曜日の更新予定です。

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